レコード寄席という秘境

レコードと暮らし


稽古の合間、ほんとうに、
今日だけ空いたスケジュールに、
レコード寄席をあてはめる。奇跡。
英俊社へのFAXを送信して、駆け出す。


車中のとも。
田口史人『レコードと暮らし』(夏葉社)


イベントに備えて、復習。
まえがき的な導入と「送り溝」の部分に、
やはり深くため息。いいなぁ。


近鉄奈良駅から、人ごみの間を走ってゆく。
店の途切れたやすらぎの道は、すっかり暗い。
会場の「THROAT RECORDS」の前には、受付が用意されていて、
店主だろうか、男性が明るい笑顔で応対していた。


ワンドリンク、少し迷ったがビールを頼む。思いがけず3種類くらいあって、
焦る。キリンにした。小さい会場に早めに着くとステキな席に座れる代わりに、
なんか後から来たひとの道をふさぐようで肩身が狭いのだけれど、
今日は田口さんの脇の、近いけど邪魔にならない席を確保。


「円盤オリジナル音の福袋CD−Rカタログ」を眺めて待つうちに、
狭い店内に人が密集してきて、会は始まった。田口さんの自己紹介のような話から、
カレー野獣館の話、円盤の話、レコードプレイヤーの話、そしてレコードをかける。
昔の映画とかで聞いたようなカサカサとこすれたような、
あの不思議な音が現実の世界に流れているなんて不思議。


途中休憩があった。さっそく物販でいろいろと購入。
まず、「作って売る」と題された、円盤の「目録」2015年版。
そして冒頭に紹介されて気になっていた虹釜太郎の『カレー野獣館』。
全部欲しかったが、というかカレー野獣缶さえ欲しかったが、
1冊800円くらいしたし、缶なんか5000円くらいだったから、
とりあえず一番カレーっぽい色の黄にしてみた。
そして、『ニッポン圧縮―70年代編―』。


『レコードと暮らし』で紹介されていて、
聞いてみたいと思っていたレコードが、つぎつぎとかかる。
「吉展ちゃん事件」の脅迫電話、北方領土とサブちゃん、
石神井高等学校の卒業記念など。


直島ミュージックスタジオの曲も、もちろんかかった。
「おやじの海」は知っていますか、と田口さんが問いかけた後、
流れてきた曲を聞いて、何か知ってる気がするな、と思った。いや、
昔、なんかの本で読んだんじゃないか、メロディーは知らないけれど、
歌詞に覚えがあるような気がしたのだ。灰谷健次郎の「島物語」だろうか。


レコード寄席、休憩を挟んでまさかの4時間弱!
これで千円(+ドリンク)は安すぎる。が、
いろいろと買ってしまって結局、散財。


佐義達雄さんの話を聞いたら、買わずにはおれなくなって、
休憩中にだいぶ買ってしまったにもかかわらず終わった後にもう一枚、
CDを購入してしまった。『直島ミュージックスタジオ作品集』、
「おやじの海」の、ギターオリジナルバージョン収録。


すっかり夜も更けてすきっぱらを抱えて家に帰りながら、
時空をさまよっているような気分になっていた。