私はハリボテ

女性誌の返品、一緒に箱に詰めたいB5版が足りない。
コミック誌売場に、漁りにいく。バックヤードにある、
発売直後のやつらに手をつけたい誘惑にかられる。
病んでいる。明日はゼクシィだ。もう空箱がない。
売れ残った重誌を裏返しにして床に積み上げる。


車中のとも。
黒岩比佐子パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い (講談社文庫)』(講談社


降りるまでの時間がわずかしかない車中でも、
ちょっとだけ読み進める。それだけの文章量でも、
首根っこを無数の小さな白い手でびっしりと、
しっかりと、捕まれてしまったような気持ち。

大逆事件は社会を大きく動揺させた。社会主義者はすべて犯罪者であるかのように見られ、彼らはひたすら沈黙を守り、身を潜めているほかなかった。堺はそのなかで決意を胸に秘めて、大逆事件の被告人の家族たちを慰問する旅に出ている。(p.27)


帰宅すると、妻がまだ帰っていなかった。
空腹を抱えてぼうぜんとする自分に、
かなりヤバイな、お前、と思った。
娘の手前、平然を装った。


そういう風に、父は、はりぼての父である。