夢中になることへの喜びと感謝と恐怖と
雨降り。
出掛けに本を選ぶ。
なんとなく、片岡義男の小説がよさそうな気がして、
一度はポケットにすべりこませたのだが、
なぜだか他の本に代えたくなる。
あれこれ選んでいたら予約の時間に間に合わなくなる。
そうして、家を出て、傘を差して歩きながら、やっぱり、
片岡義男を持ってきても良かったかな、などと考える。
鍼を終え、けっこうな雨降りの中、
このまま帰るか、大阪に出るか、迷う。
『森本書店』を探しに心斎橋へ、という目的と、
ジュンク堂書店の、難波店を見ておきたいという気持ちもあった。
『みすず』の今年の読者アンケート特集を、たぶんジュンク堂は置いているだろう。
出てしばらくたってしまったように思う。
来月には、もうないかもしれない。
『森本書店』も、部数が少ないそうだ。
入手できなかったなら、それはそれで、
読む候補が絞られるからいいんじゃないか、
という声も聞こえてきたけれど、結局は、
ジュンク堂書店の本を眺めることが多少は、
明日の仕事を高めてくれるかもしれない、
と自分を言いくるめて電車で西へ向かう。
車内、携帯電話でジュンク堂書店難波店の場所を調べようとしたが、
ジュンク堂のサイトは、ガラケーに対応していない、
という表示が出るばかり。ああ、これ、前も見たな。
仕方なく、なんばグランド花月を目指して地下をゆく。
前に通った道はとっくにわからなくなっており、
適当に進んでいくと、「ジュンク堂書店」の表示。
このビルの中にも、入っているのか。
というか、ここが難波店なのではないか?
1階、2階のホームセンターに惹かれつつも、
3階までエスカレーターをのぼり、求人ポスターにて、
ここが「難波店」であることを確認する。
担当は、「ふくしま」さんであった。
うっかり、時給とか確認してしまう。
応募する気か、とりさんよ。
以前に、ヘイト本についての福嶋さんのお話を聞いたことがある。
自分の店では、ポリシーのないまま、苦い気持ちを飲み込みながら、
棚に並べている。「反知性主義と向き合う」のフェアがやっていたはずだ。
『現代思想』2015年2月号*1には、福嶋さんの文章も載っている。
そうして、そういった福嶋さんの気配を探しながら、
店内を、うろうろうろうろうろうろうろうろうろついた。
・・・広い。広すぎる。ドイツ語のコーナーを見たら、
ケストナーのドイツ語版の本が4冊くらいあった。
幸い、義妹に買ってきてもらった『飛ぶ教室』の原書はなかった。
あぶない、あぶない。(←なにが?)
いや、なんの話だっけ。広い店内をうろつくうちに、
腹が減ってきた。あ、『みすず』を発見!やっぱしあった!
福嶋さんのコーナーらしきところもあったぞ。
ヘイト本のうんぬんは、カウンター前にあるとな。
カウンターって、あっちだっけ。見えないや。遠い。
そうして、新刊のコーナーだか、ちくまプリマー新書の群れだか、
あれやこれやを通り過ぎてようやく、それらしき一画にたどり着いた。
その後、文芸書の方を探索、本の本の充実にため息。
講談社文芸文庫の新刊も、無事にぱらぱらできた。
お店に来る前は、『梅田の紀伊國屋さんを横綱になぞらえてたから、
ジュンク堂書店の難波店は、大関あたりにしてみようかな』などと、
罰当たりな妄想をしていたのだが、なんというか、相撲にならない。
おなじ本屋さんなのだけれど、これだけの規模のお店だと、
働き方や、頭の使い方、気の遣い方とか、いろいろと、
違うスポーツのようになっちゃうんだろうな、と思う。
ほら、硬式テニスと軟式テニスとか、全然違うんでしょ?
購入。ジュンク堂書店難波店。
『みすず 2015年 02 月号 [雑誌]』(みすず書房)
松岡享子『子どもと本 (岩波新書)』(岩波書店)
だいぶんめためたにされてのち、空腹感にすがるように店を出た。
何か、逃げ出すためのきっかけがないと、棚の間で行き倒れかねない。
なんばウォークを若干、さまよってから、雨の御堂筋を北上。
さて、森本書店を探しに、スタンダードブックストアへ。
購入。スタンダードブックストア@心斎橋
『森本書店27号』(森本書店)
そしてそのまま、ランチのとも。
『森本書店27号』(森本書店)
巻頭のことばに、「好きなものに夢中になることへの喜びと感謝を込めて」(p.3)
とある、すばらしい。
岡村詩野「〜女はそれを我慢できない」、面白い。
途中まで森本書店さんの文章だと思って読んでいた。
しかし中古レコードで1万円払う、というのは、
どれほどの欲しさなのだろうか。
安田謙一「レコードのわるぐち。第3回」も面白い。
食べ物のピーナツの「パッケージを適当にコラージュして、
iPhoneの透明ケースに入れてみた」(p.8)という文章があって、
なんのこっちゃと読み進んでいったら、ちゃんと、その写真が下の方に載ってた。
安田謙一さんは、『なんとかとなんとかがいたなんとかズ』*2のヒトか。
この本は以前、恵文社一乗寺店で見た覚えがある。*3
タイトルがすばらしいね。
犬伏功のコラム。本とレコードの中古販売について
「文化を継承してきた」と評価する。ちょうど、
『購書術』*4でも話題になっていたあたりのこと。
古本買いについての、援軍となるか。
保利透「ぐらもくらぶ時局学」のページに、
『ねえ興奮しちゃいやよ』のジャケ写真(p.44)。
でも、テキストでの言及は見つけられないなぁ。これは、
古書ほうろうさんのツイートで見たことあるやつ。
しかしあれだね、『森本書店』ちゅうのは、
なんともお洒落な冊子だね。表紙のコラージュも、
中に挟まれてる無言で見開かれてる写真も、
特別ふろくレコードおばけの裏面の印刷も、
あれこれお洒落だよ!ちくしょう!
車中のとも。
堀江敏幸『本の音』(中公文庫)
それにしても冒頭の『消尽したもの』のとっつきにくさ!
何度目の挑戦なんだろう。ここで消尽したぼくは、
この後、数ページほどで力尽きて、
必ず他の本に流れてしまうのだ。
うとうとしながらよちよち読み進んでる。
ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』(新潮社)気になる。
そして、寝た。
近鉄奈良まで。
気になる新刊。(既刊もあるデヨ)
太宰治、江國香織、角田光代、川上弘美、川上未映子、桐野夏生、松浦理英子、山田詠美『女性作家が選ぶ太宰治 (講談社文芸文庫)』(講談社)
太宰治、奥泉光、佐伯一麦、高橋源一郎、中村文則、堀江敏幸、町田康、松浦寿輝『男性作家が選ぶ太宰治 (講談社文芸文庫)』(講談社)
村上春樹、島田雅彦、津島佑子、村田喜代子、池澤夏樹、宇野千代、佐藤泰志、日本文藝家協会『現代小説クロニクル 1985~1989 (講談社文芸文庫)』(講談社)
池内了、永井均、管啓次郎、萱野稔人、上野千鶴子、若林幹夫、古井由吉、桐光学園、ちくまプリマ―新書編集部『考える方法: <中学生からの大学講義>2 (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房)
NHK取材班、望月健『ユマニチュード 認知症ケア最前線 (oneテーマ21)』(KADOKAWA/角川書店)
クリスティン・ロス、箱田徹『68年5月とその後 (革命のアルケオロジー)』(航思社)
トリン・T.ミンハ、小林富久子『ここのなかの何処かへ: 移住・難民・境界的出来事』(平凡社)
甲斐みのり『ポケットに静岡百景』(ミルブックス)
田中小実昌『くりかえすけど (銀河叢書)』(幻戯書房)
小島信夫『風の吹き抜ける部屋 (銀河叢書)』(幻戯書房)
*1:『現代思想 2015年2月号 特集=反知性主義と向き合う』(青土社)
*2:安田謙一『なんとかと なんとかがいた なんとかズ』(PRESSPOP INC)