本棚を受け取ってから、はせしょ。

 

妻の友人が本棚を譲ってくれる、というので、

レンタカーを借りて京都まで出かけて行った。

想像していた以上に素敵なたたずまいの本棚を積んで、

さて、どうしようか。さっさと店に戻って設置するべきところ、

ついつい、「本の虫」が騒ぎ出す。DMで稔さんの出勤状況をお尋ね。

Google Map に「長谷川書店水無瀬駅前店」と入力してナビを開始。

 

そういえば、8月にはせしょを訪ねたときも、

友人に本棚を譲ってもらった帰りだった。あの日は、

稔さんはいなかったけれど、その分、棚を満喫して帰ったのだった。

今日は、どちらかというと、稔さんとおしゃべりしたい気分だった。

先月と同じように、水無瀬駅前のコインパーキングに車を停める。

今日は、一台分しか空いてなかった。危ない、あぶない。

 

阪急水無瀬駅の上に、秋の空。

この辺りに住んでいる人はうらやましいな、

といういつもの思いを胸に、はせしょの自動ドアの前。

入ってすぐ左の棚を眺めながら、焦らずに少しずつ、

はせしょの空気になじんでゆく。呼吸が深まる。

 

稔さんが僕に気づいて話しかけてきてくれる。

この辺りの「ご挨拶」もすっかり慣れたものになった。

ありがたいことだ。この辺りに住んでいる人は、

ほんとうに、うらやましい。

 

入り口入って右側の棚にもかじりつく。

新刊が多めだけれど、濃厚な人文書の背表紙が、

「僕ら、まだまだ現役ですけど何か?」と新刊偏重の脳を刺してくる。

『そうか、この辺りはまだまだ、棚に置いておいていいのですね』

と、励まされる。メモは取らない。(今はまだお客の気分強め)

運よく店長のお許しを得て、稔さんを借りてランチを共に。

 

かなり長い間、稔さんとのランチは「カウンセリング」のように、

僕の窮状を訴える機会でしかなかった。今日は違う。

まだまだほんの入り口ではあるけれど、

新しい仕事について前向きな話ができているのが嬉しい。

去年の今ごろを思うと、ほんとうに、信じられない。

 

はせしょに戻って、棚を見ながら、

ときどき稔さんと言葉を交わす。

この辺りに住んでいる人は、

ふぅ。

 

購入。長谷川書店水無瀬駅前店。

堀田季何『俳句ミーツ短歌』(笠間書院

東畑開人『野の医者は笑う 心の治療とは何か? (文春文庫 と 34-1)』(文藝春秋

月刊京都 2023年 10 月号 [雑誌]』(白川書院)

 

ひとり芝居をやった時に書いた「たんざく」が、

今なお、はせしょのあちこちに貼ったままになっている。

それが多少なりとも、稔さんのおしゃべりの助けになってるかもしれない、

というのが、とてもとても嬉しかった。

 

お会計時、レジの一角に「ほんの入り口」のショップカードを発見。

応援してもらっているなぁ、という喜び。

 

他のお客さんと稔さんが話し始めたタイミングで、帰ることにする。

いつまでも、話し続けてしまいそうだから。帰り道、運転しながら、

考え事でもしていたのだろうか、高速で違う道を選んでしまったり。

じんわりとした幸せと一抹の不安を抱いて、奈良を目指す。

火曜日に、本屋さんにゆく

 

先週も行ったが、

今週も行く。

 

スタンダードブックストアに行くことも、

チラリと頭をかすめたけれど、子どもらが、

下校する前に帰宅できなそうで、諦めた。

中川さんの、次なる本屋を期待して待つ。

 

今日は、JRで行く。

奈良から郡山まで、4分。

近すぎる。

 

西大寺で乗り換えたりなんだり、という時間と、

近鉄郡山駅からとJR郡山駅からとの時間の差、で、

結局、うちからとほんさんに行くのって、

どうやって行くのが一番近いのか、

まだ分からない。

 

JRに乗って、ふと、

このまま乗っていけば天王寺に行けるんじゃないか、

と、スタンダードブックストアへの未練が頭をもたげる。

でも、郡山で降りた。

 

去年の、名古屋攻め以来のJR郡山駅だ。

あの時は、駅前で砂川さんに車で拾ってもらったのだ。

駅からとほんさんに行ったのは、いつ以来なんだろう。

入っていくべき路地がどこなのか、自信がない。

 

なんとなく歩いていくと、八百屋さんがあって、

ここかな、という道を歩いていく。豆パン屋アポロがあって、

一安心。合ってた。思ってたより、JR駅に近いのな。

入ってみたい気持ちもあったのだが、記憶よりも、

店内が奥の方に引っ込んでる印象で、以前に行ったことあるのに、

びびってスルーしてしまった。写真さえ撮れなかった。

 

自分の店のことを考えると、

撮影とか、ぜんぜん大歓迎なんだけどな、と思うが、

だからといってバシバシ無断で他所の店の写真は撮れない。

緑道の石碑とか、神社の外観とかは、撮れた。

 

いつもにも増して爽やかな砂川さん、マスクをしていないからか。

お店のことなどをあれこれ尋ねて、ぜんぜん棚が見れない。

もっと棚を見ていろいろ学びたい気もするし、

普通に読みたい本のオーラも摂取したい。

でも喋っちゃう。奥方さまも登場。

 

購入。とほん。

困ってる人文編集者の会『おてあげ 第一号』(困ってる人文編集者の会)

 

雨が降っていた。

折りたたみ傘をさして歩き出す。

探している本があったから、という理由だけでもないが、

なんとなく慣れた道を左に曲がって、近鉄方向へ。

スマホで電車の時間を確認してから、本屋へ入る。

目的の本は見つからず。店頭で知った雑誌を買う。

 

購入。啓林堂書店郡山店。

Chat GPT完全攻略(週刊ダイヤモンド 2023年6/10・17合併号 [雑誌])』(ダイヤモンド社

 

近鉄奈良駅に降り立つ。

空腹を抱えながら、商店街を南下していく。

飲食店の前を通り過ぎるたびにサッとなかをのぞくも、

入る「勇気」が湧いてこない。勇気とは?

 

フジケイ堂の入り口だったところのシャッターに、

テナント募集の看板を見る。智林堂さんは営業している。

商店街には、外国人観光客らしき人がひしめき合っている。

雨の平日、ものともせず。けれどもこの人たちが船橋商店街を歩いても、

うちの店で楽しんでくれそうにはない。いや、本当にそうなのか?

 

昼飯を食べられそうなお店を探しながらどんどん南下する。

あぁ、そういえば、南果さん、好きだったな。

ハナロジさんにご挨拶しようか、とも思ったが、

あの「路地」に入るところにチェーン。

一帯がお休みなのかしら、火曜日。

 

道端の観光地図なども確認しながら、

元興寺のある通りを、今度は北上。

cojica books の前で、傘を閉じる。

itoito夫人とお話しながら、棚を盗み見る。

店内から見る元興寺、本当に、真ん前なのね。

 

購入。cojica books。

(ま)&アサノタカオ『「知らない」からはじまる』(サウダージ・ブックス)

 

その後、慶河堂に行くつもりだったが、

ご主人が、「今日は休みみたいだよ」と教えてくださって、

断念。なるほど、Twitterで、そのように書いてあった。

再び、昼食を取れそうな、いや、入る勇気が湧いてきそうな、

優しい飲食店を探しながら、北上していく。

どんどん北上していく。ベニヤさんには、

雨の日は入りにくい。本を濡らしてしまいそうで。

喫茶田川は、閉まっていた。

 

もうここまで帰ってきたら、家で何か食べよう。

そう思って必死に歩いていたが、とうとうエネルギー切れ。

吸い込まれるようにミジンコブンコさんに入った。

何年ぶりか。什器の様子など変わっている気がする。

靴を脱いで上がってすぐのソファ席に座る。

 

カレーを注文して、目の前に並ぶ背表紙に目を走らせる。

同じ著者の本や、似たようなテーマの本が、わざとなのか、

ちょっと離れたところに差してある。その距離感が、

結構おもしろい。こういう並べ方も、いいな、と思う。

 

阿川弘之鮨 そのほか(新潮文庫)』(新潮社)に、ふと手が伸びて、

吉行淳之介を偲ぶ座談会、というのを読みふける。

第三の新人」の錚々たる面々による思い出話。

遠藤周作小島信夫庄野潤三三浦朱門阿川弘之

 

文字で読む限り、思い出話に興じる5人の口調は、

若々しい。怪しい探検隊が目黒考二を忍ぶとき、

こんなにも賑やかな感じになるのだろうか。

そういえば、椎名誠目黒考二の「最後の会話」を、

椎名誠の文章で、読んだ。*1

 

スープ、カレー共にむちゃくちゃ美味しかった。

ミジンコさんにショップカードを渡してご挨拶、

とも思ったが、びびってダメだった。

あんなに優しそうな笑顔だったのに。

 

それにしても、久しぶりに本を読んだ気がする。

明日からまた、お客さんを待つ日々だ。

 

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できれば、開店の日の日記とかも書きたかったが、

なんとなく、このまま書けないままになりそうなので、

今日のところにひとまずご挨拶を記しておこう。

 

5月20日に、奈良で小さな本屋を開きました。

初めて本屋でバイトしてから20年くらいか。

まさかそんな未来が待っているとも知らず、

あの頃の私は、芝居やりながらもけっこう楽しく、

夢中になって本屋での仕事に励んでいたのかな。

 

元々、本屋さんに行くのは大好きだったけど、

本屋で働くようになってからよりいっそう、

客として「本屋さんにゆく」ことも楽しくなった気がする。

何もかもを回収しようとするのは虫がよすぎるとは思うけど、

たくさんの時間を本屋さんの棚の前で過ごしてきたことが、

これからお店に来てくれるお客さんのためにも、

何かプラスになってくれることを祈る。

 

これまではあちこちの本屋さんにゆく日々でしたが、

これからしばらくは「自分の本屋さんにゆく」日々を。

 

「ほんの入り口」で、お待ちしております。

(休みの日はあちこちの本屋さんに参ります)

 

ほんの入り口

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