とり、名古屋の本屋さんにゆく、おっさん三人組として

 

JR奈良駅へと小走り。

この時間この道を小走る人生は、

パラレルワールドじゃなきゃ、存在しないのだね、

「その世界線も面白そうね」ってのは、

ヒトゴトなればこその感想。

 

今はただ、ストレスに内臓をなぶられずにいられる生活を、

ありがたいと思って、じっと手を見る。じっと手を、

見ているだけでもありがたいはずが、どうでしょう、

お誘いいただきおじさんドライブ、来月で閉店してしまう、

名古屋七五書店を訪れる旅にご一緒させてもらう僥倖。

 

JR郡山駅に降りたつのはいつ以来か、

ひとまずとほんさんのある改札出て右側のほうへ。

朝のさわやかな駅前ロータリーには人も少なく、

ほどなくして、モーリー氏も姿を現す。

コンビニで買い物を済ませて外へ出れば、

スッと横づけされた車にスナガワ氏。

どことなく、ルパン三世御一行気分で、

ハンドルはお任せ、お気楽に騒ぎ立てる後部座席。

 

あっちゃこっちゃに飛び交う話題さばきも鮮やかに、

3時間の安全運転をもってスナガワ氏が連れてきてくれたのは、

精文館書店中島新町店。なんとなく外観を撮影したりして、

いざ入店。懐かしい感じのする本屋さん、この懐かしさ、

どこから?と、これはもしや、買切値下げ雑誌コーナーか?

 

とたんに胸にわきたつ黒い雲、いかん、いかん、と、

足早に通路を進み始める我が両足、知らない本屋さんに、

早く魂を馴染ませよ、とて、先に身体が反応したか。

あれ、面識が無いとはいえ、いや、初対面であればこそ、

ご挨拶が肝要ではないかと遅まきながら気がついて、

はてさてモーリーはいずこスナガワ兄さんの姿はいずこ。

 

すでにご挨拶の態勢にあるおふたりに駆け寄って、

「どうも初めまして、無職の徒です」

旧交を温めるお三方。後ろで聞いている間にも、

どんどんと熱くなるわたしの「本屋魂」、

あぁ、このお人はきっと、一緒に働いている人たちを、

温かく楽しませてくれる人なのだろう、今はもう、

発揮する棚のない我が本屋魂へそっと布をかぶせる。

 

購入。精文館書店中島新町店。

ひさだかおり『迷う門には福来る』(本の雑誌社

 

続いて訪れた本屋さんは、

名古屋金山は TOUTEN BOOKSTORE さん。

大きいガラス戸から店内がのぞける外観は、

早く来い来いと誘っているかのよう。

 

いざお店に入って各々、棚へと駆けだして、

そういえば道中、「おっさん三人組で女性店主のお店にゆくなら、

初めにご挨拶して怪しい者ではござらんことを申し開きすべし」

などと打ち合わせしておいたのではなかったか。2階にも行き、

さんざん棚をなめつくすように拝見してからであったか、

スナガワ氏が、店主にご挨拶。他にもお客さんがいたし、

思っていたより店内も広かったし、そんなに、

おびやかすこともなかったかな、おっさんたち。

 

木の什器の美しい、居心地の良いお店でございました。

カウンターを飾るタイルも素敵。骨太な人文書もけっこうあって、

かつコロコロコミックとかも置いてあって、手広く、

様々なお客さんの期待に応えようという強い意思を感じました。

末永く、ご繁盛あれ!

 

購入。TOUTEN BOOKSTORE。

碇幸恵『35歳からの反抗期入門』(温度)

 

さて最後に控えしは、本日のお目当て七五書店、

隠しきれない寂しさも両手にご挨拶。いや、

あたしは例によって、謎の連れとして後ろでウロウロ。

消えゆくお店への感傷に毒づくK氏の声音を首筋に感じつつ、

とほんさんに在庫の無さそうな本を探す。いや、

ココまで来たら、おもうさま、買いたい本を買ってくださいよ!

と、スナガワ兄貴にどつかれることも重々承知でなお、

郡山で見かけた本には指が伸びない、どうしても。

 

棚を見たり、ことばを交わしたり。

と、なごり惜しむモーリー氏とスナガワ氏を横目に、

背表紙に視線を走らせるのを楽しむ。ああ、こういう棚を、

近所に欲しいものよ。本を買って、レジ前で、

記念写真を撮ってもらった。後で見たら、

見事に黒っぽいおっさん三人組。

けっこう、怖いね。。。

 

購入。七五書店。

kotoba(ことば) 2015年 07 月号 [雑誌]』(集英社

エーリヒ・ケストナー、酒寄進一『終戦日記一九四五 (岩波文庫 赤 471-2)』(岩波書店

多和田葉子エクソフォニー――母語の外へ出る旅 (岩波現代文庫)』(岩波書店

 

お別れの挨拶をするも、名残り惜しさに珈琲を、

と、まほろば珈琲館に引き返す。チラチラと、

横目で本棚を眺める。ゴロウさんの本屋魂は、

どこぞに流れてゆくのかな。いや、

あたしの本屋魂こそ、どこぞで、

活かされることありやなしや。

 

と、かけた布をちらりとのぞけば、

鼻息あらく、こっちをにらみつけておりました。