「ゆううつに追われています」
今朝、子どもらがなかなか起きてこなかったおかげで、少し妻と話せた。
案外、そんなところにも回復のきっかけはひそんでいたりする。
子どもらがそばにいることで、何か話題にしにくい事柄や態度があったりして、
そういう些細なことさえ気持ちを腐らせてゆくことにもなる。
とはいえ、まだまだ気持ちが弱っている。
昨日から、ちょっと心に浮かんでいたこと、
あの人に、助けてもらいに行くということ。
子どもらを保育園に預けて、家を飛び出す。
旅が、我が身を救ってくれるというのなら、
日々避けられないあちらこちらへの移動をどうにかして、
「旅」とみなすことはできないものか。
この移動から充電できないものか。
ただ、京都行き近鉄特急に乗るだけでもいいんじゃないのか。
ただ通過する新大宮駅を眺めるだけでも「非日常感」は生じるのではないのか。
西大寺を通過して、大阪へ向かう線路に別れを告げて、右へ曲がるカーブを感じるだけでも、
いくらかのMPを回復できるんじゃないのか。
妻と話したことで、あるいはこの即席のひとり旅ごっこのおかげでか、
いくらかゆううつが薄まっていくような気になってきた。ただやはり、
ゆううつな気分は神出鬼没なものですから、油断なく、絶え間なく、
我を励まし続けねばなりませぬ。
後方に流れゆく車窓からの風景よ、わたしのゆううつも連れていっておくれ。
下方に流れゆくタイムラインよ、わたしのゆううつも連れ去っておくれ。
ドライブも好きだけど、ストレス解消になると思うけど、ヒトの運転で、
ぼんやり窓の外に流れる景色を眺めていられる電車って、なんとありがたい存在か。
ああ、車窓から見る川の眺め、サイコー。電車に乗って会いに行くくらいの、
少しだけ遠くにいる「会いたい人」の、ありがたみ。
車中のとも。
色川武大『うらおもて人生録 (新潮文庫)』(新潮社)
レシートがはさまっていた。2002年5月13日のレシートだ。
TOKYO文庫TOWERとある。渋谷大盛堂書店の、別館か。
支払いに図書券を使ってる。もしかして、最後に図書券使った日かもしれない。
少しだけ読み始める。優しい。ほんとうに優しいなぁ。
島本駅から暖かい陽射しの中を歩いてゆく。
長谷川書店に足を踏み入れると、店番は女性の方ひとり。
問い合わせ電話に「今、分かるものが休憩に出ていて」と対応している。
おそらく、もうすぐ稔さんが帰ってくるのだろう、安心して、
棚を見て回る。日野さんの載っている「ダ・ヴィンチ』に、
手を伸ばしたところで、稔さんが戻ってきた。
購入。長谷川書店。
木村草太『子どもの人権をまもるために (犀の教室)』(晶文社)
頭木弘樹『絶望図書館: 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語 (ちくま文庫)』(筑摩書房)
ピンポンズさんのCDとか、いろいろ買い散らかしたい気持ちをぐっとこらえ、
ていねいに、今日の日にふさわしいと思えるような本を選ぼうと試みる。
予想していた通り、想定していた滞在時間がどんどん延びてゆく。
もうそろそろやばいな、という頃になってまた、稔さんから、
コーヒーとサンドイッチの提案をいただいた。
泣く泣く断り、島本駅に戻る途中のローソンでサンドイッチを買う。
帰りの電車で、ひとりサンドイッチ。行きはよいよい帰りはこわい。
保育園に迎えに行って、行事の写真の注文書などを書いているうちに、
どんどん遅くなってしまった。時間感覚がマヒしたままカレーを作りだし、
半ベソをかきながらジャガイモを電子レンジに入れたりしている。
もう少し、時間がかかりそうだ。