前向きシート、あずきトースト、読了ツイート

誰かが足りない (双葉文庫)


休配日。
昨日の読了*1を受けて、「読んでいない本」にふさわしい、
二度ほど挫折した『本の音』*2を持っていこうと鞄に放り込む。
ところが、どうしたことか、ふと別の本溜まりに目が向いて、
それを思い出した。危ない、もう10月も終わりじゃないか。
帯とカバーを外して『本の音』の替わりに鞄へと迎える。


いつもと違う時間、久しぶりに前向きシートの電車に乗れた。
以前はもっと、土曜日に遭遇することが多かった気がするのだが、
微妙にダイヤが変わってしまったのかもしれない。ほんとうに久しぶりだ。
送品表は取り出さず、いきなり文庫を開ける幸福。


車中のとも。
宮下奈都『誰かが足りない (双葉文庫)』(双葉社

十月も終わりに近づき、日暮れになると風が少し肌寒いくらいだ。(p.12)


前向きに座っていると、いやおうなく前に持っていかれる感が、ある。
「予約1」の雰囲気にも影響されているのかもしれない。引きずられるように、
仕事へ、明日へと、連れて行かれる。車窓に目をやる頻度もあがる。
本を読む速度は鈍る。でも好き。週に1回くらい、乗りたい。


途中の乗換え駅でトーストセット。今朝は食べながらも読み止められない。
予約2、すごいな。すごかった。今朝のトーストセットのあずきトースト、
美味い。どんなローテなのか、ときどきしか当たらない。どうなっているのか、
今朝は、いろいろと恵まれすぎているのじゃないか。
予約3で浮かんだ涙をそのままに、店を出た。


季節や日付のはっきりしている文章は、
その時分に読むとより楽しめるような気もする。


「予約4」も良かった。「予約5」に進む。
「オムレツ係が俺だ。」というすてきな台詞に、
思わずページを閉じてガラクタケータイを開く。


  ツイート。


余裕のある美人のことが気になりながら、
iPodサニーデイの「雨の土曜日」を聞く。
少し無理をすればもう少し読み進められそうだけど、
まぁ、いいや。早めに職場についてしまう。
入荷のない土曜日。静かに午前が過ぎる。


期待していると、ほとんど仕事がはかどらないものだけれど、
油断していると、することを見失って立ちつくしてしまう。


今日もすっきりしない気持ちで、
それでもいくらか片づいたブックトラックを後にする。


待ち合わせの時間まで、お金をおろしたりしながら、
ずっと文庫を手にしていて、信号待ちの間、街灯の明かりで読み進め、
うっかり横断歩道を渡りながらも読み続け。「予約5」を読み終えた。
もう終わりかと思ったけど、まだ「予約6」があった。嬉しい。


   前のお店で一緒だった先輩たちと食事。
   実に久しぶりの再会で、食事をするのは初めてだったが、
   ちょっとおしゃべりが過ぎたくらい、楽しい時間だった。
   僕の関西生活はこの人たちに支えてもらっていたのだな、と、改めて。


「予約6」、そして解説。


読了。
宮下奈都『誰かが足りない (双葉文庫)』(双葉社


僕がツイッターでフォローしている人たちの多くが宮下奈都さんのファンであり、
この『誰かが足りない』についても、「ハライナイト」なる遊びがあることは、
いつの間にか頭に入っていて、6月に初めて寝屋川市の本屋さんに行った日、
『そうだ、今年は僕もハライナイトに参加できるぞ』と思って、
これを買ったのだった。*3その店では、やはり宮下さんを応援する書店員さんがいて、
僕が買った文庫にもサインが入っていた。僕は、サイン本を求めることはほとんどなく、
「目の前でサインをもらうのでないならサイン本は意味がない、寂しい気持ちすら感じる」
などと思っているのであるが、この文庫には「ハライでお会いしましょう」という言葉も添えてあり、
それが、なんかちょっと恥ずかしくもあるのだが、まっすぐ僕に向かって言われているように思えたのだ。


この本を面白く読んだ人、面白く読んでいる最中の人にとって、
「ハライでお会いしましょう」と言われるのは、とても嬉しいことだと思う。
おそらく、僕はTL上の遊びにも参加してしまうのだろうけれど、
どこかで、それとはまた別のハライを求め続けるだろう。


そこには、宮下奈都さんが待っているような気がする。
あるいは、足りない誰かが待っているのかもしれない。