2012 五本の指

今日は、連休の二日目。昨日、今日と、
2012年の読書を振り返って、ベスト5を選ぼうと、
四苦八苦している。こんなに悩んだりして、
まったく時間のムダのように思えるのに、
やめられない。なんだこれ。


トランプのひとり遊びをとめられないようなものかしら。


その結果がどうあれ、自分にとっても、誰かにとっても、
なんの影響も与えないだろうことに、拘泥してしまう。
とりあえず、話し始めましょう。そのうち、決まるだろう。


えぇ、2012年は、書店員に復帰しまして、
日夜本に触れる幸せな日々を再び得まして、
まさに「とり、本屋さんにゆく」一年間でありました。


何より、小一時間の通勤読書時間がありがたく、
ここ数年のなかでも、比較的たくさんの本を読めた年でした。
近所にある奈良県立図書情報館にもずいぶんとお世話になり、
軍資金と本棚のスペースに余裕のない私は随分助けられました。


一方で、関西に移住してきたものの、
こちらの書店での新規開拓はまだまだで、
恵文社やスタンダードブックストアなど、
もともと好きだったお店をなぞっているだけ。


もちろん、それはそれで幸せな時間なのですが、
せっかくこっちに住んでいるのだから、もう少し、
いろいろな本屋さんに足を運んで刺激をもらって、
自分の働いている本屋さんに還元しなくては、とも思う。


では、2012年の、五本の指です。


い:田中美穂わたしの小さな古本屋?倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間』(洋泉社
ろ:又吉直樹第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)』(幻冬舎
は:選考中。
に:選考中。
ほ:『冬の本』(夏葉社)




「い」は、倉敷にある古本屋さん、蟲文庫の店主、田中美穂さんの本。
2月には、山本善行さんとのトークショーを聞きにガケ書房まで行きました。
こないだ再読したのだけれど、短めの、ステキな文章たちの群生は、
本当に幸せな読書時間をもたらしてくれます。今年はぜひ、
蟲文庫さんを訪問したいと思っております。


女性による古本屋さんの本、というので、仙台は火星の庭の、
こちらの本もたいそう面白かったです。
前野久美子『ブックカフェのある街 (仙台文庫)』(メディアデザイン)
あとは、未読の田中さんの苔本も残ってますな。
田中美穂浅生ハルミン苔とあるく』(WAVE出版)


「ろ」は、もはや読書特集ではおなじみの存在になってしまった、
ピースというお笑いコンビのひとり、又吉直樹の読書エッセイ。
読書エッセイと言ってしまったが、かなりシュールな文章もあり、
本格的な古本話もあり、軽いタレント本とか思って読まないのは、
もったいないことだと思います。前にも書いたけれど、
背表紙も写るように書影を載せているのがすてき。


さて、2冊紹介したところで、本の本しか出てきていない。
これは、なんか、そういう年だったということなのだろうか。
「は」はどうだ。選考中、とある。そうです、まだ決まってないまま、
こうして語り始めているのであります。選考の助けとなるように、
今年読んだ「本の本」を振り返ってみようか。


新刊『古本道入門』を出したオカタケ師匠の本を、
何冊も再読しました。『古本道入門』もよかったんだけど、
やっぱし『読書の腕前』が大好きだったから、うーん。


岡崎武志古本道入門 - 買うたのしみ、売るよろこび (中公新書ラクレ)』(中央公論新社
岡崎武志読書の腕前 (光文社新書)』(光文社)
岡崎武志昭和三十年代の匂い (学研新書)』(学習研究社
岡崎武志古本でお散歩 (ちくま文庫)』(筑摩書房
岡崎武志古本極楽ガイド (ちくま文庫)』(筑摩書房
岡崎武志古本生活読本 (ちくま文庫)』(筑摩書房



古本本としては、下記のような。あ、再読も含めます。


山本善行関西赤貧古本道 (新潮新書)』(新潮社)
山本善行『古本のことしか頭になかった』(大散歩通信社)
荻原魚雷古本暮らし』(晶文社
北原尚彦『発掘!子どもの古本 (ちくま文庫)』(筑摩書房
蝦名則、牧野伊三夫『えびな書店店主の記 (四月と十月文庫1) (四月と十月文庫 1)』(港の人)


続いては、本屋さんの本。


中村文孝『リブロが本屋であったころ (出版人に聞く 4)』(論創社
内沼晋太郎『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版)
伊藤清彦『盛岡さわや書店奮戦記―出版人に聞く〈2〉 (出版人に聞く 2)』(論創社
上村卓夫『書店ほどたのしい商売はない』(日本エディタースクール出版部
岡崎武志+CWS『『本屋さんになる!』 書店・古書店を独立開業するためのアイデアとノウハウ (CWSレクチャーブックス)』(メタローグ
佐野衛『書店の棚 本の気配』(亜紀書房
石塚昭生『石塚さん、書店営業にきました。』(ポット出版
伊達雅彦『傷だらけの店長 〜それでもやらねばならない〜』(パルコ)
本の学校本の学校・出版産業シンポジウム2007記録集―書店の未来をデザインする』(唯学書房)
三島邦弘『計画と無計画のあいだ---「自由が丘のほがらかな出版社」の話』(河出書房新社


読書の本、その他。


今江祥智さよなら、ピーター・パン―子どもの国からの挨拶、また (福武文庫)』(福武書店
宮崎駿本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)』(岩波書店
松岡正剛多読術 (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房
植田実真夜中の庭――物語にひそむ建築』(みすず書房
堀部篤史本を開いて、あの頃へ』(mille books)
奥野宣之『「処方せん」的読書術 心を強くする読み方、選び方、使い方 (oneテーマ21)』(角川書店(角川グループパブリッシング)
高橋源一郎一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))』(岩波書店
荒川洋治夜のある町で』(みすず書房
豊崎由美ニッポンの書評 (光文社新書)』(光文社)
須賀敦子コルシア書店の仲間たち (文春文庫)』(文藝春秋
ミシマ社編『THE BOOKS 365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」』(ミシマ社)
ジュンク堂書店新宿店『書店員が本当に売りたかった本』(飛鳥新社


リスト作るのに疲弊してきました。
そうですね、今年は、ミシマ社の本屋さんを訪ねることができました。
そこでは、三島邦弘さんと光嶋裕介さんとのWSにも参加したのでした。
そうさな、単独の著者がいないことでちょっと印象が薄れがちだったけど、
ミシマ社さんとの思い出も含めて、この一冊を「は」に認定しましょう。


「は」:ミシマ社編『THE BOOKS 365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」』(ミシマ社)


ワークショップの帰りに光嶋裕介さんとご一緒できたのも、
よき思い出です。ミシマ社での出版、楽しみにしてますよ。


光嶋裕介、内田樹(ゲスト)、井上雄彦(ゲスト)、山岸剛『みんなの家。建築家一年生の初仕事』(アルテスパブリッシング)


その光嶋さんが建てた凱風館の館長、内田樹の本を、
今年もたくさん読みました。読み返しました。
ミシマ社から出た『文体論』もよかった。


内田樹平川克美東京ファイティングキッズ・リターン―悪い兄たちが帰ってきた (文春文庫)』(文藝春秋
内田樹街場の読書論』(太田出版
内田樹街場のメディア論 (光文社新書)』(光文社)
内田樹昭和のエートス (文春文庫)』(文藝春秋
内田樹ぼくの住まい論』(新潮社)
内田樹街場の文体論』(ミシマ社)
内田樹名越康文西靖辺境ラジオ』(140B)
内田樹春日武彦健全な肉体に狂気は宿る―生きづらさの正体 (角川Oneテーマ21)』(角川書店
内田樹日本辺境論 (新潮新書)』(新潮社)


春樹本も、こりずに読み返しました。
こちらは新しい本もいろいろ印象的でした。
小澤征爾との対談とか、インタビュー集とか。


村上春樹風の歌を聴け (講談社文庫)』(講談社
村上春樹1973年のピンボール (講談社文庫)』(講談社
村上春樹羊をめぐる冒険 (上) (講談社文庫)』(講談社
村上春樹羊をめぐる冒険 (下) (講談社文庫)』(講談社
村上春樹ダンス・ダンス・ダンス〈上〉 (講談社文庫)』(講談社
村上春樹ダンス・ダンス・ダンス〈下〉 (講談社文庫)』(講談社
村上春樹走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)』(文藝春秋
村上春樹海辺のカフカ (上) (新潮文庫)』(新潮社)
村上春樹海辺のカフカ (下) (新潮文庫)』(新潮社)
村上春樹神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)』(新潮社)
村上春樹夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです 村上春樹インタビュー集1997-2011 (文春文庫)』(文藝春秋
小澤征爾村上春樹小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮社)
スコット・フィッツジェラルド村上春樹グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)』(中央公論新社


父娘、に限らないけれど、親子ものにもずいぶんと、
ひきつけられました。


ECD何にもしないで生きていらんねぇ』(本の雑誌社
植本一子『働けECD わたしの育児混沌記』(ミュージックマガジン
宮脇檀『父たちよ家へ帰れ (新潮文庫)』(新潮社)
檀ふみ父の縁側、私の書斎 (新潮文庫)』(新潮社)
小林信彦パパは神様じゃない (ちくま文庫)』(筑摩書房


と、いうわけで、お迎えの時間が迫ってまいりました。
オムツも買いに行かねばならないし、えいや!っと、
「に」の本を選んでしまいましょう。


糸井重里松本大洋ボールのようなことば。 (ほぼ日文庫)』(東京糸井重里事務所)


アフォリズム集、ではないのだけれど、
読む本に困ったときなど、さっと手にとって、
何度も読み返せる一冊でした。


そして、「ほ」は、昨年の締めくくり、
『冬の本』です。これから、この本で知った本へと、
旅をしていくのがとても楽しみです。


その他、書名を挙げられなかったけれども、ケストナー本、
堀江敏幸長嶋有、国語辞典の本、佐藤泰志海炭市叙景
町田康小松成美あたりを、楽しく読みました。


さて、2013年も、よろしくお願いします。
お迎え行ってきます。


あ、もう一度、きちんと掲載しなくては。


い:田中美穂わたしの小さな古本屋?倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間』(洋泉社
ろ:又吉直樹第2図書係補佐 (幻冬舎よしもと文庫)』(幻冬舎
は:ミシマ社編『THE BOOKS 365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」』(ミシマ社)
に:糸井重里松本大洋ボールのようなことば。 (ほぼ日文庫)』(東京糸井重里事務所)
ほ:『冬の本』(夏葉社)




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