2021 10冊の本

いやぁ、2021年も、しんどかった。
コロナのことはもちろんだが(二度目の「休業」)、
夏に勤務先閉店を経ての秋、新しいお店に異動。
メンタルの基礎防御力が低下していたのか、
異動先のお店でのあれこれにいちいちつまずき、
そうとうに、へばってしまった後半戦だった。


それでもなんとか生きのびた。


年明け早々の棚卸しもセットで、
過酷な2021年をロスタイムまで全力疾走。
2022年は、もう、ぼんやりと流されてゆきたい。


2021年、10冊の本。(読了順)
★齋藤陽道、頭木弘樹、岩崎航、三角みづ紀、田代一倫、和島香太郎、坂口恭平鈴木大介、與那覇潤、森まゆみ、丸山正樹、川口有美子『病と障害と、傍らにあった本。』(里山社)
★餅井アンナ『へんしん不要』(タバブックス)
赤坂憲雄、藤原辰史、新井卓『言葉をもみほぐす』(岩波書店
★吉田亮人『しゃにむに写真家』(亜紀書房
★髙村志保『絵本のなかへ帰る』(岬書店)
★荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房
★栗原康『サボる哲学』(NHK出版新書)
★倉下忠憲『すべてはノートからはじまる』(星海社新書)
坂口恭平『躁鬱大学』(新潮社)
★藤井基二『頁をめくる音で息をする』(本の雑誌社


★齋藤陽道、頭木弘樹、岩崎航、三角みづ紀、田代一倫、和島香太郎、坂口恭平鈴木大介、與那覇潤、森まゆみ、丸山正樹、川口有美子『病と障害と、傍らにあった本。』(里山社)
もともと知っていた書き手の人の文章もあれば、
この本で知った書き手の人もいた。森さんのは、
『明るい原田病日記』(ちくま文庫)へ読み進み、
川口さんの医学書院のやつも、読みたいと思っている。
はせしょでひとり芝居では、坂口さんとこ音読したりした。


★餅井アンナ『へんしん不要』(タバブックス)
去年だけで3回くらい読み返したのではないか。
低体温で、生きのびた記録を粘り強く記した一冊、
「弱り仲間」からの声援のようでもあるし、もっと言えば、
「弱っている自分自身」からの助け船のようでもある。
こぶりのソフトカバー、鞄に入れやすいのも助かる。
弱り切って、都内のホテルに一泊旅行した回が好き。


赤坂憲雄、藤原辰史、新井卓『言葉をもみほぐす』(岩波書店
信頼しあっている者同士のことばの往還を目撃する、
ということだけで、この世界を信じるための力を回復してもらえる。
大げさでなく、ニュースで流れてくる政治家のことばや、
オリンピックのあれこれとかに、命を削られる思いだった。
次は、自分もその「往還」の中に飛び込みたい。


★吉田亮人『しゃにむに写真家』(亜紀書房
奥さんの「叱咤激励」に、自分自身が叱られたような、
身のすくむ思いを何度も。そうして、けれどもその結果、
『The Absence of Two』につながる「写真」という仕事を、
吉田さんが育て続けていった、というのはなんとも、
人生の不思議を感じる。あたしも仕事を育てたい(切実)。


★髙村志保『絵本のなかへ帰る』(岬書店)
「本屋」の仕事の、大切なことが、
すごくすごく濃密に記されていた。
よくぞ、本にしてくれた、という一冊。
岬書店があって、良かった、という一冊。


★荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房
こちらも、日々ことばを殺され続ける日常生活について、
「同じ世界を生きている感触」を共有できる文章が並んでいる。
そうして、いのちをつなぐためのことばをどうつむいでいけばよいか、
ヒントになりそうな一冊ではある。とはいえ、再読しようとして、
何度も首をひねって本棚に戻したこともあり、一筋縄ではいかぬ、
きちんと、こちらのコンディションも整えてのぞみたい一冊。
(無事に、再読できました。再読も、よかった)
榎本紗香の扉絵も、とても勇気づけられる。


★栗原康『サボる哲学』(NHK出版新書)
私は、奴隷根性を抱えて生きているのだな、
と教えてくれた一冊。ハリエット・タブマンなど、
好奇心が他のあれこれに飛び火してくれた「効果」もあったが、
この本に流れる「くりはら節」は、私を鼓舞してくれるのだ、
という発見が嬉しかった。(『アナキズム』の「くりはら節」は、
わたしには毒だった)


★倉下忠憲『すべてはノートからはじまる』(星海社新書)
一時期、ずっと鞄に入っていて、
お守りのように読み返していた。自分にできないことを、
「自分のしなくてはならないこと」だと思ったら、つらい、
ということを、この本を読みながら自分に言い聞かせている。
何度も、言い聞かせている。


坂口恭平『躁鬱大学』(新潮社)
卒業したけど、その後、2回くらい、再入学している。
躁鬱超人になりたいなぁ。去年は、坂口さんの本、
いくつも読み歩いた。どれも良かったけれど、一番、
繰り返し助けてもらっている子を挙げておこう。


★藤井基二『頁をめくる音で息をする』(本の雑誌社
本の造りも文章も、とても良かった。ここ何年も、
「本を読んだときに、どのように助けられたか」みたいのが、
その本を「良い」と思えるときの基準のひとつになっていたが、
これは、もうシンプルに「読んでいるときの幸福感」が、
際立っていた、というのが、なんと言ったらいいか、
「読み手の良心を取り戻した」みたいでホッとした。
藤井さん、ありがとうございます。お店、いつか行きたいです。



以下、簡単に、読んだ本や、
訪ねた本屋さんのメモなど。


1月
1月24日:「何も見えなくて、冬~とり、こりずにはせしょでひとり芝居」

 

近藤康太郎『三行で撃つ』(CCCメディアハウス)
長田弘『読書からはじまる』(NHKライブラリー)
朱戸アオ『リウーを待ちながら 1』(講談社
朱戸アオ『リウーを待ちながら 2』(講談社
朱戸アオ『リウーを待ちながら 3』(講談社
吉田篤弘『雲と鉛筆』(ちくまプリマー新書
★齋藤陽道、頭木弘樹、岩崎航、三角みづ紀、田代一倫、和島香太郎、坂口恭平鈴木大介、與那覇潤、森まゆみ、丸山正樹、川口有美子『病と障害と、傍らにあった本。』(里山社)
斎藤環、與那覇潤『心を病んだらいけないの?』(新潮選書)
ウチダゴウ『鬼は逃げる』(三輪舎)
南木佳士『根に帰る落葉は』(田畑書店)

 

2月

筒井淳也『社会を知るためには』(ちくまプリマー新書
★餅井アンナ『へんしん不要』(タバブックス)
北村太郎『センチメンタルジャーニー』(草思社文庫)
『新潮2021年3月号』(新潮社)
佐久間裕美子『We の市民革命』(朝日出版社
橋本亮二『本を抱えて会いにいく』(十七時退勤社)
赤坂憲雄、藤原辰史、新井卓『言葉をもみほぐす』(岩波書店
松田道雄『STANDARD BOOKS 松田道雄 子どものものさし』(平凡社
☆前川恒雄『未来の図書館のために』(夏葉社)
島田潤一郎『古くてあたらしい仕事』(新潮社)
丸山晃『旅をする本』(ラグーナ出版)


3月

國分功一郎、熊谷晋一郎『〈責任〉の生成 中動態と当事者研究』(新曜社
★吉田亮人『しゃにむに写真家』(亜紀書房
『吉田亮人写真集 The Absence of Two』(青幻舎)
アーノルド・ローベル 文・絵、三木卓 訳『かえるの哲学』(ブルーシープ)
伊藤清彦、内野安彦『本屋と図書館の間にあるもの』(郵研社)
黒川創『ウィーン近郊』(新潮社)
吉田篤弘『ぐっどいゔにんぐ』(平凡社
田口史人『父とゆうちゃん』(リクロ舎)
信田さよ子『家族と国家は共謀する』(角川新書)
平尾昌宏『ふだんづかいの倫理学』(晶文社
寺田寅彦中谷宇吉郎山本善行・撰『どんぐり』(灯光舎)
『日常的実践のポイエティーク』(ちくま学芸文庫
立岩真也『介助の仕事』(ちくま新書
金井美恵子『〈3・11〉はどう語られたか』(平凡社ライブラリー
伊藤洋志『イドコロをつくる』(東京書籍)
★髙村志保『絵本のなかへ帰る』(岬書店)
伊藤洋志『ナリワイをつくる』(ちくま文庫
トーベ・ヤンソン、小野寺百合子『ムーミンパパ海へいく』(講談社文庫)


4月
益田ミリ『スナックキズツキ』(マガジンハウス)
小日向京『考える鉛筆』(アスペクト
柴崎友香『百年と一日』(筑摩書房
松本創『軌道』(新潮文庫
文學界 2021年5月号』(文藝春秋
 →アマンダ・ゴーマンの「わたしたちの登る丘」
早坂大輔『ぼくにはこれしかなかった』(木楽舎
伊藤亜紗中島岳志若松英輔國分功一郎磯崎憲一郎『「利他」とは何か』(集英社新書
畑村洋太郎『回復力』(講談社現代新書
小山清『風の便り』(夏葉社)
小山清『ある靴屋の話』(おひさまゆうびん舎)
『群像 2021年4月号』(講談社
菅間正道:編『向かい風が吹いても』(子どもの未来社
東畑開人『居るのはつらいよ』(医学書院)
梅崎春生『怠惰の美徳』(中公文庫)
森川すいめい『感じるオープンダイアローグ』(講談社現代新書
『教科書名短篇 家族の時間』(中公文庫)
佐藤岳詩『「倫理の問題」とは何か』(光文社新書
佐藤泰志きみの鳥はうたえる』(河出文庫
小笠原博毅、福嶋聡パンデミック下の書店と教室』(新泉社)


5月
『書肆山田の本 1970ーー2021』(書肆山田)
梨木香歩『物語のものがたり』(岩波書店
小川洋子堀江敏幸『あとは切手を、一枚貼るだけ』(中央公論新社
北村薫(原作)、タナカミホ(漫画)『空飛ぶ馬』(リイド社
ヘレーン・ハンフ、江藤淳『チャリング・クロス街84番地』(中公文庫)
ニコ・ニコルソン、佐藤眞一『マンガ認知症』(ちくま新書
★荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房
中村桃子『「自分らしさ」と日本語』(ちくまプリマー新書
ひうち棚『急がなくてもよいことを』(KADOKAWA
光用千春『コスモス』(イーストプレス
村上春樹柴田元幸『本当の翻訳の話をしよう』(スイッチ・パブリッシング
森まゆみ『明るい原田病日記』(ちくま文庫
森まゆみ『路上のポルトレ』(羽鳥書店

 

6月
運転免許失効、再交付。

 

山本善行『本の中の、ジャズの話。』(書肆よろず屋)
河合隼雄河合隼雄 物語とたましい』(平凡社
藤原辰史『分解の哲学』(青土社
岩瀬成子『二十歳のころ』(晶文社
石橋毅史『「本屋」は死なない』(新潮社)
河合隼雄『こころの処方箋』(新潮文庫
石橋毅史『本屋な日々 青春篇』(トランスビュー
藤田政博『バイアスとは何か』(ちくま新書
鴻上尚史『演劇入門』(集英社新書
大阿久佳乃『パンの耳 5』
大阿久佳乃『パンの耳 4』
東村アキコ『かくかくしかじか』(集英社


7月
BTSを知る。

 

辻山良雄『小さな声、光る棚』(幻冬舎
鈴木宏昭『認知バイアス』(講談社ブルーバックス
IN/SECTS Vol.13』(LLC インセクツ)
本の雑誌編集部:編『10代のための読書地図』(本の雑誌社
鳥羽和久『おやときどきこども』(ナナロク社)
★栗原康『サボる哲学』(NHK出版新書)
河合隼雄河合隼雄と子どもの目』(創元社
村上春樹風の歌を聴け』(講談社文庫)
トーベ・ヤンソン山室静ムーミン谷の仲間たち』(講談社文庫)
★倉下忠憲『すべてはノートからはじまる』(星海社新書)


8月
勤め先、閉店。

 

栗原康『はたらかないで、たらふく食べたい』(タバブックス)
千葉雅也、山内朋樹、読書猿、瀬下翔太『ライティングの哲学』(星海社新書)
金井雄二『短編小説をひらく喜び』(港の人)
吉本ばなな『キッチン』(福武文庫)
『群像 2020年12月号』(講談社)乗代雄介「旅する練習」

 

9月
映画『ドライブ・マイ・カー』

 

長田弘『読書からはじまる』(ちくま文庫
東畑開人『心はどこへ消えた?』(文藝春秋
坂口恭平『躁鬱大学』(新潮社)
安田登『三流のすすめ』(ミシマ社)
上杉忍『ハリエット・タブマン』(新曜社
篠森ゆりこ『ハリエット・タブマン』(法政大学出版局
管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』(ちくま文庫
長部三郎『伝わる英語表現法』(岩波新書
山下賢二、松本隆『喫茶店松本隆さんから聞いたこと』(夏葉社)


10月
BRUTUS』「村上春樹特集」
苫野一徳『未来のきみを変える読書術』(筑摩書房
山下賢二『ガケ書房の頃 完全版』(ちくま文庫
遠藤嘉基渡辺実『着眼と考え方 現代文解釈の基礎[新訂版]』(ちくま学芸文庫
『もしも、東京』(小学館
ハン・ガン『ギリシャ語の時間』(晶文社
和田靜香小川淳也(取材協力)『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた』(左右社)
将基面貴巳『従順さのどこがいけないのか』(ちくまプリマー新書

 

11月
堀江敏幸『いつか王子駅で』(新潮文庫
モリテツヤ『汽水空港台湾滞在記 vol.1』(汽水空港)
落合博『新聞記者、本屋になる』(光文社新書
山本善行清水裕也『漱石全集を買った日』(夏葉社)
堀江敏幸『雪沼とその周辺』(新潮文庫
坂口恭平『現実脱出論 増補版』(ちくま文庫
斎藤環坂口恭平『いのっちの手紙』(中央公論新社
pha『人生の土台となる読書』(ダイヤモンド社
三島邦弘『計画と無計画のあいだ』(河出文庫)
青木真兵『手づくりのアジール』(晶文社
内堀弘『ボン書店の幻』(ちくま文庫
★藤井基二『頁をめくる音で息をする』(本の雑誌社
島田潤一郎『父と子の絆』(アルテスパブリッシング)

 

12月
幻の「ブルーバックスコーヒー」オリジナルマグカップ入手。

 

島田潤一郎『90年代の若者たち』(岬書店)
島田潤一郎『本屋さんしか行きたいとこがない』(岬書店)
延江浩『松本隆 言葉の教室』(マガジンハウス)
島田潤一郎『あしたから出版社』(晶文社
信田さよ子、上間陽子『言葉を失ったあとで』(筑摩書房
渡辺一史「なぜ人と人は支え合うのか』(ちくまプリマー新書
上西充子『呪いの言葉の解きかた』(晶文社
富永京子『みんなの「わがまま」入門』(左右社)
エマ・ヘップバーン、木村千里『心の容量が増えるメンタルの取扱説明書』(ディスカヴァー21
谷口ジロー『冬の動物園』(小学館
伊藤 絵美『つらいと言えない人がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみた。』(医学書院)
沢野ひとし『ジジイの片づけ』(集英社
長岡健『みんなのアンラーニング論』(翔泳社
村上春樹回転木馬のデッド・ヒート』(講談社文庫)
武井麻子『思いやる心は傷つきやすい』(創元社



2020 10冊の本
https://tori810.hatenablog.com/entry/2021/02/09/123134


2019 10冊の本
https://tori810.hatenablog.com/entry/2020/05/05/153231


2018 五本の指(そしてさよなら)
http://tori810.hatenablog.com/entry/20190126


2017 五本の指
http://tori810.hatenablog.com/entries/2018/02/09


2016 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20170108


2015 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20160203


2014 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20150108


2013 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20140130


2012 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20130109


2011 五本の指 
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20120104


2010 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20110105


2009 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20100102


2008 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20090102


2007 五本の指  
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20080102


2006年ベスト5 
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20070102


2005 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20060101


2004 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20050101

 

ベニヤ初め、顔をあげたい

こどものスモールトラウマのためにできること: 内面で何が起きているのか

 

子どもたちがカフェごっこをしてくれて、

コーヒーやら、ランチやらを用意してくれる。

ありがたやー、ありがたや。

 

おまけに美容院の予約も取れて、

ごっこ続ける子どもらを置いて、

出かけた。さっぱりした。

 

帰りに、ベニヤさんに寄る。

9月に異動して勤務時間が変わってから、

ぜんぜん、お会いできていなかったおかみさんと、

久しぶりにお話できた。(弱音90%)

 

購入。ベニヤ書店。

スッダ・クドゥバ穂積由利子『こどものスモールトラウマのためにできること: 内面で何が起きているのか』(春秋社)

 

帰宅して、まだカフェは続いていた。

コーヒーを注文した。美味しい。

 

いったい、この部屋のどこに不幸があるのだろうか。

何をいじけているのだろうか。

 

けれども、くよくよしている自分は、確かにいる。

そうか、そうなのか。くよくよしているのか。

 

よしよし、くよくよするがいい。

なんでか知らんけど、くよくよしているのだ。

 

けれどもそこでカフェを営む小さき子らの、

真剣なまなざしを見て、勇気をもらうがいい。