本屋を彷徨するたましい

ヘルシンキ 生活の練習 (単行本)

 

早番。

荷物を開ける機会は、グッと減った。

久しぶりに箱から出てくる本に触れて、

嬉しい。

 

脳内で、グルグルと「考え」が浮かぶ。

こないだ、ふとんの中で練習した、

葉っぱに浮かべるやつをやってみる。

うまくいってるような気もする。

 

気になる新刊。

石田光規『「人それぞれ」がさみしい ――「やさしく・冷たい」人間関係を考える (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房

 

勤め先で全く買わないことはもちろん無いけれど、

どうしても、買えないこともある。なんとなく、ではあるが、

休憩前後、勤務後に、レジの前に立つ気になれないこと。

潜入者ゆえの、後ろめたさ?そんな大げさなものじゃない。

 

結局、退勤が遅くなって、子どもらのお迎えには間に合わない。

小走りで、本屋さんに寄る。よその本屋さんにいそいそと駆け込む。

ツイッターで知ったあれこれだけでも十分、予算オーバーだ。

高島さんの本は、今日はやめておこうか。

 

島田さんはツイッターとかで欲しい本の情報を得ることに、

ためらいというか嫌悪というか警戒めいたことを言っていた気がするけど、

私は、そこに関しては、案外、気に留めていなかった。

読みたい、欲しいと思えるタイミングは、多いほど、いい。

 

まずは、やはりTLで知った、『ヘルシンキ 生活の練習』を、

なんとなく探す風で、けれど、いつの間にかただただ棚を散策している。

レジ前の新刊コーナーの裏側をさーっと見ていき、文芸誌のとこ、

日野さんの文章を立ち読みして、ミーツの焼き鳥を横目に、

一瞬、児童書のほうに行きかけて、いかんいかん、今日は、

予算も時間もないのだった。コミック棚のとこでぐっと左に曲がり、

平台を右手にサッ、サッと視線を走らせながら人文書の方へ。

 

もう、『ヘルシンキ』の書名も溶けてしまった頃に、

パッと目の前に『ヘルシンキ』が登場した。おお。

そうして、脳内検索、青山さんが紹介していた、

あれは目の見えないなんとかさんと、アート。

そうか、アートのコーナーにあるかしら。

 

「芸術」の棚をグルグル回る。演劇のところには、

じっとりとした視線を走らせて、陶芸とか、音楽とか、

楽譜も売っているのか、美術の本がないね、西洋絵画とか、

あれ、ぜんぜんないね、グルグル回る。無いことは、ないだろう、

ふと見た棚サイン、通路を挟んで反対側、文芸書とか、

文庫とかがある列の方なのか!そういえば、以前こっちに、

オサムグッズとかイラストレーターのやつとかあった、あった、

こっちだ、ほら、さすがに、面陳。そうだ、白鳥さんだった。

 

2冊とも、検索機を使わずにたどり着いたことに満足して、さて、

青山さんのなんとか当事者、文芸エッセイのところに探すも、

あんぱん ジャムパン クリームパン——女三人モヤモヤ日記』が一冊、

差さっているだけ、無いのか、在庫が無いのか、念のため、

検索機を叩く。あった!社会?なんと、そうなのか。

7冊くらい在庫あり。危ない、危ない。

諦めなくてよかった。

 

そこは、あまり行ったところのない棚だった。新鮮。

やはり、検索機も使ってみるものだ。ふだん行かない棚にも、

面白い本はたくさんある。それがジュンク堂。すばらし。

今日選んだ本、3冊とも、複数冊在庫があって、

僕が買ってもまだ、他の人も買えるのだ。

恐ろしい、ジュンク堂

 

この「本屋」は、いったいどうやって維持されているのだろう。

そうして、そうでない本屋さんの提供する魅力とは?

(いやまぁ、広すぎることはときにシンドクもあるからね)

 

購入。ジュンク堂書店難波店。

朴沙羅『ヘルシンキ 生活の練習 (単行本)』(筑摩書房

川内有緒『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく (集英社インターナショナル)』(集英社

青山ゆみこ『ほんのちょっと当事者』(ミシマ社)

 

単行本、三冊。この本たちの重みがすなわち、

ワタシが何とかしたい思いなのかしら。本にすがる。

すがれるだけ、マシ、なのか?

 

鞄には、元々文庫二冊に、単行本が一冊入っていた。

思っていた以上に、重たい思い。

 

読了。

高橋源一郎101年目の孤独――希望の場所を求めて (岩波現代文庫)』(岩波現代文庫

 

車中のとも。

児島宏子『チェーホフさん、ごめんなさい!』(未知谷)

 

読み進むに連れて、児島さんの語りさきが、

読者からチェーホフさんに移ってゆくようだ。

チェーホフさん、ごめんなさい!」というセリフも、

何度も出てきて、そのリフレインはなかなか愉しい。

 

★ ★ ★

 

妻が寝てからも、「年賀状」の続きを書いていた。

12枚ほどになった。弱音を書ける相手もいれば、

ぜんぜん違ったことを書ける相手もいて、なるほど、

聞き手が変われば、私の「状況」も変わってしまう。

 

なんとなく眠るのを先送りしたくて、

チェーホフさん、ごめんなさい!』の続きを読む。

アオサギとツル」のとこ、面白い。

とほんおさめ2021「遁走」

ぼくのがっかりした話 (シリーズ再生の文学)


妻実家へ荷物を受け取りにレンタカーを走らせる。
運転は、好きだ。ときどき事故るから、
控えめにしてはいるけれど、好きだ。
そうして、帰りにとほんさんにゆく。

 

ぽつぽつと近況を話しつつ、
背表紙で目を洗いつつ、買おうと思う本を、
ココロに刻みつけつつ、いつしかまた、
苦しい胸の内を吐露しつつ。

 

突然、奥方様が登場した。
「明けましておめでとうございます~(笑)」
なんですか、それ!いったい今がいつなのか、
実際に分からなくなって大爆笑。お邪魔してます!

 

今年は、コンスタントにとほんさんを訪問できて良かった。
すっかりアジール的に「利用」させてもらっていることに、
今日、気がついた。

 


私にとって、分かりやすい避難先は、
長谷川書店だった。今でも、そうだ。
だけど、その他の本屋さんも、少なからず、
私を励まし、守ってくれる場所であるのか。

 

それは、自分自身が一番分かっているはずだし、
島田さんの文章でも何度も読んでいるし、だからこそ、
「生きのびるために」本屋に潜入して日銭を稼ぐことにした、
のではなかったか?

 

あまりに弱りすぎているからなのか、

何なのか、本屋さんにゆくことだけでは、

回復しきれていない傷が増えてきたのかもしれない。

それでも、今日、とほんさんの「守る力」を感じて、

とてもとても、安心した。ありがとうございます。

 

購入。とほん。
『よくわかる出版流通の実務』(H.A.B)

『よくわかる出版流通の実務』(H.A.B)

思いやる心は傷つきやすい: パンデミックの中の感情労働』(創元社

橋本亮二『たどり着いた夏』(十七時退勤社)

セルジョ・トーファノ、橋本勝雄ぼくのがっかりした話 (シリーズ再生の文学)』(英明企画編集)