2018 五本の指(そしてさよなら)

2018年も慌ただしい年であった。
私という人間が慌ただしいのだから、
2018年だって、2028年だって慌ただしい。
2018年も相変わらず慌ただしい気持ちで過ごしてしまった、
というのが正確な記述になるのだろう。


そんなわけで、例によって、読書の記録も記憶もあやふやで、
それでもこの「はてなダイアリー」に残された文章を見直しただけでも、
あれもあった、これもあったと充実した読書生活だったのは、
間違いないようであります。


そんでもって、例年の「五本の指」という語感に対する違和感を抱えつつ、
はてなダイアリーも終わることだし、とりあえずダイアリー時代の、
僕自身の意識の低さもそのままに、2018年までは、
五本の指」と題して、記しておこうと思います。


2018年、五本の指
い:梯久美子原民喜 死と愛と孤独の肖像 (岩波新書)』(岩波書店
ろ:龍應台、天野健太郎台湾海峡一九四九』(白水社
は:田尻久子『猫はしっぽでしゃべる』(ナナロク社)
に:齋藤陽道『声めぐり』(晶文社
ほ:吉田篤弘神様のいる街』(夏葉社)


「い」は、岩波新書らしからぬ全オビで話題になっていた一冊。
本の雑誌』での紹介にて遅ればせながら手にとって読んで、
ひれ伏した。続いて原民喜『夏の花・心願の国』*1も読んだ。
これにも、参った。忘れられてしまいそうな人生を、
文章に、ことばに掬い取ってそれを読んだ人の、
心細い人生を励ますという現象に感動した。
感謝もした。


「ろ」は、昨年に引き続き、天野健太郎さんの翻訳書(図書館本)。
台湾への関心の消えない熾火として、この本を読み切ったということが、
これからも僕を焚きつけてくれるだろう。天野さんは亡くなってしまったけど、
近い隣人への、温かいまなざしをたやさないよう、手を伸ばしてゆきたい。
自転車泥棒*2を読むのも楽しみだ。


「は」は、ご存知、橙書店の店主による「初」の著書。
文章がとてもよくって、これからまた田尻さんの文章を読んでいきたいと思った。
すでに発行された著書がたくさんあるわけではない、ということが、
なんか、嬉しかった。並走してゆける、というか。
読んでいて、とにかく幸せだった一冊。


「に」は、刊行当初に気になっていたのに、
なぜか手に取らないままになっていた一冊で、
読んでみて、とにかく温かく、懐かしく、
励まされる本だった。飾らない文章で、
こちらを責めてくることなくけれど、
今よりももっとよい自分になっていけるような、
いじけずに、胸を張って生きていきたくなるような、
励ましてくれる文章でした。読んで良かった。こちらも、
『異なり記念日』*3が待っててくれている。読むの楽しみです。


なんというか、励まされたかったんだね、
2018年の僕は。2月に、軽いというか、重かったのか、
「死にたい」というようなゆううつがまとわりついてきて、
大学のセンパイや、友人や、妻や、はせしょの稔さんやら、
いろんなひとにぶら下がって、なんとか踏みとどまって、
それでも、その記憶というか、感触が常に残っていて、
おびえながら暮らしていたところがあった。
励ましになることばは、いつも欲しかった。


これも、とても励みになったけど、まだ読んだばかりで、
『声めぐり』に似た位置づけだったので、5冊には含めず、
隣りに並べておく。おすすめです。


渡辺一史なぜ人と人は支え合うのか (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房


で、こいつをはずして何を入れるのよ!っていうと、
「ほ」の、この一冊。これは、あっという間に読んでしまって、
そういうのってけっこう記憶に残らなかったりするのだけれど、
『神様のいる街』は、あの、読んだ日の喜びとか、
幸福感とかが残っていて、本のたたずまいも、
これまで避けているくらいだった吉田篤弘さんへの、
「苦手意識」の払拭というおまけもついてきて、ええ、「ほ」で。


もうそろそろ、昼飯を片づけて出勤しなきゃだ。
28日までに更新しないと、ダイアリーでのアップができないので、
もう、なんだかなぁ、だけど、駆け足で。


須賀敦子についての2冊、これも、良かった。
大竹昭子須賀敦子の旅路 ミラノ・ヴェネツィア・ローマ、そして東京 (文春文庫)』(文藝春秋
松山巖須賀敦子の方へ (新潮文庫)』(新潮社)


堀部さんのこの一冊には、仕事への意識を問われてしまった。
堀部篤史90年代のこと―僕の修業時代』(夏葉社)


本の本、本屋さんの本には、
励まされてばっかりです。(ほんとはベンキョウもしなきゃだけどな)


ヘンリーヒッチングズ、浅尾敦則この星の忘れられない本屋の話』(ポプラ社
内沼晋太郎『これからの本屋読本』(NHK出版)
岩楯幸雄『幸福書房の四十年 ピカピカの本屋でなくちゃ!』(左右社)
石橋毅史『本屋な日々 青春篇』(トランスビュー
宇田智子『市場のことば、本の声』(晶文社
松本大介『本屋という「物語」を終わらせるわけにはいかない (単行本)』(筑摩書房
福嶋聡書物の時間―書店店長の想いと行動 (多摩デポブックレット)』(共同保存図書館・多摩/けやき出版)
本を贈る』(三輪舎)
鎌田浩毅『理科系の読書術 - インプットからアウトプットまでの28のヒント (中公新書)』(中央公論新社
南陀楼綾繁本好き女子のお悩み相談室 (ちくま文庫)』(筑摩書房
岡崎武志読書の腕前 (光文社新書)』(光文社)
木村俊介『漫画の仕事』(幻冬舎コミックス
荒川洋治忘れられる過去 (朝日文庫)』(朝日新聞出版)


本屋さんといえば、
この雑誌の特集は良かったです。


SAVVY(サヴィ)2018年12月号[雑誌]』(京阪神エルマガジン社


片岡義男、とぎれとぎれではあるけれど、
もうしっかりと、僕の読書のレギュラーに定着した。


片岡義男コーヒーもう一杯 (角川文庫 緑 371-12)』(角川書店
片岡義男英語で言うとはこういうこと (角川oneテーマ21)』(角川書店
片岡義男珈琲が呼ぶ』(光文社)←これまだ読み途中だ。


励まされたといえば、この本のたたずまいは、
かなり独特で、安らかな気持ちになった。


きだにやすのり『ずこうことばでかんがえる』(エイチアンドエスカンパニー)


もうちょっと、現実的な「励まし」というか、
ヒントは読書猿さんから。刊行予定の『独学大全』待ってます。


読書猿『問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール』(フォレスト出版


背伸びな感じとして、英語への憧れ。
そして柴田元幸さん自身の文章も、好き。


柴田元幸ケンブリッジ・サーカス (新潮文庫)』(新潮社)
レアード・ハント柴田元幸今井亮一、福間恵『英文創作教室 Writing Your Own Stories』(研究社)


その柴田さんも書いていました。「創造について」
続・中学生からの大学講義3 創造するということ (ちくまプリマー新書)』(筑摩書房


上記プリマー新書にも文章が載っていた堀江敏幸も、
僕の守護神の一人だ。
堀江敏幸その姿の消し方 (新潮文庫)』(新潮社)


なぜか堀江敏幸と並んで守ってくれているのが、長嶋有
長嶋有猛スピードで母は (文春文庫)』(文藝春秋


こちらは、イベントも良かった。本を読み終えたときは、
一瞬、しばらく読書断ちしようかと血迷った。


3人はもりあがる@心斎橋
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20180429


西村佳哲一緒に冒険をする』(弘文堂)


みつばち古書部の卒業。
卒業後のみつばちの盛り上がりに、寂しさを感じている。


これは、ワールドエンズオザワさんの推薦図書。良かった。
サンドラ・シスネロス、くぼたのぞみ『マンゴー通り、ときどきさよなら (白水Uブックス)』(白水社


2018年も、長谷川書店さんでひとり芝居、やらせていただきました。
「何も見えなくて、夏 とり、ふたたびはせしょでひとり芝居」
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20180819


2019年も、やれたらいいな、と考えております。お楽しみに。
そうそう、警察官とかきちゃったので書き方難しいと思っているうちに、
書く機会を逸してしまったのだけど、ときわ書房志津ステーションビル店でも、
ひとり芝居やらせていただきました。ヒノ店長、セキグチさん、ありがとうございました。


2018年は、異動もあって、9月から新しいお店で働いてます。
なんとか、1冊でも多く、誰かの手に届けるため、
今年も小走りで、進んでゆきます。


おそらく、はてなダイアリーでの更新は、
これが最後になるでしょう。


皆さま、ありがとうございました。
ごきげんよう、またどこかでお目にかかります。



2017 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20180209


2016 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20170108


2015 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20160203


2014 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20150108


2013 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20140130


2012 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20130109


2011 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20120104


2010 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20110105


2009 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20100102


2008 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20090102


2007 五本の指  
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20080102


2006年ベスト5
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20070102


2005 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20060101


2004 五本の指
http://d.hatena.ne.jp/tori810/20050101