力を得て、力を失う

車中のとも。
原民喜夏の花・心願の国 (新潮文庫)』(新潮社)


「死のなかの風景」、読んだ。


休憩の時、去年、先輩からもらった手紙を読み返す。
この人はほんとうに、僕のよろこぶ言葉を知っている。
メールを送る。誰かからのことばに飢えている。


ふらりと上司が現れる。少し話したところで、
問い合わせがあり、売場へ飛び出す。コミックか。
冷や汗を流しながら背表紙をにらんでいると、
そこへひょっこり、M氏が現れた。おお!


神様が、よってたかって、ぼくに励ましを送ってくれているのか。
かなり苦戦したが、探していたコミックは見つかった。
探しながらM氏とことばを交わす。上司の目を盗んで、
M氏とことばを交わす。その後、結局ゆっくり話せないまま、
彼は帰ってしまった。申し訳なかったが、とても嬉しかった。
上司にも、いろいろと話を聞いてもらい、なんとなく力を得た。


帰りの電車では、新潮社の『波』10月号を読む。
新潮45』10月号の広告に、げんなりする。この時点ではまだ、
休刊にはなっていなかったのだ。そうして、けれども、
こうして同じ誌面に並んで載っているのを読んで、
今、新潮社の中のひとは、どんな心境なのか、
想像する。『新潮』の広告は、まだ11月号の。
12月号で編集長の矢野優氏は、『新潮45』について、
詫びている。どんな心境なのか。息子の不祥事を詫びる芸能人。
まさか。若杉良作氏は、新潮社の社員なのだろうか。今もまだ、
新潮社の中で、何か仕事をしているのだろうか。周りの人は、
どのような感じでことばを交わしているのだろうか。


アンケート企画で「新潮社社員が選ぶ新潮文庫わたしの5冊」というのが、
8ページに渡って掲載されている。「受付」とか、「新潮講座」とか、
「社長」とか、いろんな部署のヒトが書いているのが面白い。
若杉良作氏の名前もあった。やはりこの人も、「一員」なのだ。
『殺人犯はそこにいる』が若杉氏に選ばれていた。


『波』をこうして、後ろからめくっていく。
堀井憲一郎「『流転の海』を数えてみた。」面白い。
『流転の海』のことは、タイトルは覚えがあるが、
読んだことはなく、読もうと思ったこともなかった。
堀井さんの文章で、少し、読んでみたくなった。


そうして、堀本裕樹による宮本輝のインタビュー、
これも面白かった。37年かかって、完結したのか。
今はまだ、最終巻単行本出たばかりだけれど、
今から読み始めたら、そこにいくまでに、
文庫化しそうだよな、とか考える。


こういう考えの人が多いと、単行本は売れないよなー。


座談会「遊郭観光」面白い。ブレディみかこの連載は、
面白い、というか、レンタル屋の店員に対して複雑なきもちになる。
ここまであからさまに客に対して嫌な態度をとる店員はいるのだろうか、
という気持ちもあるが、ブレディさんにはそう感じたのだろうし、
実際、そういう態度だったのかもしれない。かなしいね。


北野新太「踏切の一瞬」良かった。沢木耕太郎の話。
最初に名前を見たときに確信が持てなかったが、やはり、
『透明の棋士*1『等身の棋士*2の北野さんだった。
沢木耕太郎、いつの間にか読まなくなっていたな。
また読もうかな。

*1:北野新太『透明の棋士 (コーヒーと一冊)』(ミシマ社)

*2:北野新太『等身の棋士』(ミシマ社)