本の残像、旅の気配

大阪駅から行く青春18きっぷの旅 (えるまがMOOK)


ゆうべこしらえたおにぎりを解凍、鞄に放り込んだ。
けれども昨日買った柔らかいポケットティッシュは置いてきた。
店に着くと、尻ポケットから先週の残りのティッシュが発見された。
今日は、これでしのぐしかないのか。そんな風に洟を停滞させると、
また中耳炎になってしまうのではないだろうか。大問題だ。


さすがにだいぶん短くしたので、何人もの人に「バッサリいきいましたね」と
声をかけられる。「春が来たと思ったんですけどねぇ」という返しで、
何人かの失笑を買うと、もう止められなくなって、
四回も五回も同じ回答を差しだしているうちに、
自分の脳の経年劣化がほとほといやになった。


ふと、『みすず 1・2月合併号』を探しに天王寺にさまよい出た。
初めてくまざわ書店阿倍野店を訪れた。見つけられなかった。
諦めて、スタンダードブックストアへ向かった。
Kさんがいたら訊ねてみようかとも思ったが、
まぁ、たぶん、なかろう。すると、こっちがあった。
心斎橋では見つけられなかった、『翻訳問答2』だ。嬉しい。
初めて実物を見た。これは、買おう。店内を一回りするうちに、
こちらも目にとまった。『大阪駅から行く青春18きっぷの旅』だ。


先日の交換会で、18きっぷの本を差し出したのだが、
それに加えて今読んでいる『人生の特別な一瞬』が、
ちょいちょい旅情をかきたててくるので、なんとなく、
手にしてしまう。これ、自店では、もう、返品してしまっている。
それなのに、ここでは、きちんと平積みされている。ああ、熱量が違う。


購入。スタンダードブックストアあべの。
大阪駅から行く青春18きっぷの旅 (えるまがMOOK)』(京阪神エルマガジン社
鴻巣友季子翻訳問答2 創作のヒミツ』(左右社)


ジュンク堂にも寄ってみたが、『みすず』は見つからず。
珍しく、店員さんに訊ねてみたが、取り扱い、なし!
せっかく来たからとバカでかい児童書フロアにも顔を出したが、
前回来たときには揃っていた『セーラーとペッカ』シリーズが、
軒並み返品されていた。(いや、売れたのかもしれないけどさ)


失意にまみれて、エスカレーターをおりる。
書店の在庫を過信しちゃだめだ。難波のジュンク堂で去年買ったからといって、
あべののジュンク堂で、しかも今年、『みすず』があるとは限らない。
今年は、難波にもないかもしれない。そしてセーラーペッカ。
あれを買ったのは、もう一昨年でなかったか?
そのときに見かけたシリーズがまだ在庫していると思うなんて、
純情にもほどがあるんじゃないかね?


どこかの新刊書店で、まだ在庫してるお店、ないだろうか。
ヨックム・ノードストリューム、菱木晃子『いったいどうした?セーラーとペッカ』(偕成社
ヨックム・ノードストリューム、菱木晃子『セーラーとペッカの運だめし』(偕成社
ヨックム・ノードストリューム、菱木晃子『セーラーとペッカは似た者どうし』(偕成社


読了。
長田弘人生の特別な一瞬』(晶文社


「旅の書斎」が、良かった。二回読んだ。
旅に出たくなる文章がたくさんあった。


けれども、そういう文章を読んで思うのは、
この日常の風景を、さっと、旅の情景に変えてしまう魔法のことだ。

研がざれば光なしと言うが、感受性もおなじだ。秘境も絶景もないが、遠くの街の日常を訪ねる旅の時間には、じぶんの感受性を更新できる、不思議な時間が隠れている。(p.106)


旅先で、「遠くの街の日常」に感受性を更新できたなら、
「いつもの街の日常」を旅人の目で眺めるくらい、
感受性が豊かになっていればいいのに。


本は、それを助けてくれると、思う。