とり、神戸の本屋さんにゆく

飛ぶ教室 (少年少女世界文学館 15)


午前中、買い物に出た妻を待って、乳児と過ごす。
ほぼ眠っているので、気楽に洗濯物を干すなど。
昼食をとり、いざ、西へ。三ノ宮行き快速急行


車中のとも。
北村薫六の宮の姫君 (創元推理文庫)』(東京創元社


「いい仕事をして下さい。僕も負けないように、いい仕事をしたいと思います」(p.149)
泣ける。


眠くなったので姫君にはお引き取り願って、
1曲だけ民生を聴いて(「3人はもりあがる」)、
今日のイベントの「課題図書」をパラパラする。
おのれの低級書店員ぶりが、改めて鼻先にしみてくる。
こういう人たちが店を追われて、自分のようなものが棚をいじっているなんて。


乗り換えて一駅。元町に出た。二年ぶりか。
ラクタケータイをかちかちしで、道案内のツイート*1に従って、
お店にたどり着いた。向こうからやってきた男性が看板を撮影している。
同士!彼が階段を上っていったあと、こちらも看板を撮影した。


2階にあがり、店に入る。お客さんは、先ほどの男性ひとり。
すっと右側に折れて、店の奥へと向かう。音楽が聞こえる、
と気がついた時には、目の前にやたらと大きなオーディオ。
素人には分かりかねるが、かなりちゃんとしたやつだろう。
少なくとも、狭い古本屋の中には設置されないサイズだ。
日本の古本屋に設置されたオーディオの中で、
一番おおきいかもしれない。


そのオーディオの右側の、児童書から流していく。
懐かしい本が、ちらほら、手に取ったり、
取らなかったり。あまり見ない本もある。
値段を見ようとしても、表示が見つからない本もある。
スリップに、「1003」と書いてあるのもあれば、
違う店名が入ってるのもある。


そうそう、私がうろついているこのお店は、
オープン初日、「1003」という古本屋さん。*2
オーディオから流れる音楽、窓からの風景、真新しい本棚、
とてもすてきな空間だ。次々にお客さんが入ってきて、
細い通路をよちよちとすれ違ったりする。
店主の前に出てきたときに、ご挨拶。
2回ほど、楽しいお酒を飲んだ間柄。


変わらぬ笑顔でカウンターの向こうに座っていたけれど、
なんとなく、「おるすばん」ぽい雰囲気でしたぜ?


気になった本も手に取らず、棚で泳がせたままうろつくこと、
しばらく。そろそろお会計へと駒を進めようかと、選定に入る。
ちょいちょいヨソさんからの助っ人古本君たちが混じっているが、
せっかくのオープン日なので「1003スリップ」を探して購入。


棚の上の方には、背表紙を奥にしてたくさんの本たちが出番を待っておりました。
飲み物も出してもらえるので、次回はゆっくり。末永く繁盛されますようお祈り申し上げます。


購入。1003。
エーリッヒ・ケストナー、山口四郎『飛ぶ教室 (少年少女世界文学館 15)』(講談社
ロアルド・ダール田村隆一あなたに似た人』(早川書房
フィリップ・K・ディック浅倉久志アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))』(早川書房


小雨がぱらつく中、次なる古本屋さんを求めて、
早足で路地を行く。コンビニでトイレを借りたとき、
なるべくお礼に買い物をしたい。今日はガムだ。
久しぶりにガムを買った。ついでに言えば、
コンビニトイレのお礼買い物も久しぶり。


年を取ると、ずうずうしくなる。
これは、最近、恐れていることである。


ガムを噛みながら、1003でいただいた、
「神戸・書店マップ」を頼りに、店を探す。
そうして、看板を発見す。


書肆スウィートヒアアフター
まだオープンする前の店主と、
恵文社一乗寺店のイベントでお会いした。
店主は、取引先の男性と商談中だったが、
僕が入っていくと、「初めてですか?」と言って、
棚にある「新刊書」と「古本」の区別の仕方を説明してくれた。
そうしてまた、商談に戻った。店内には、店主、取引先の男性、
僕、そしてもう一人、壁に絵を設置している女性がいた。


絵をよく見ると、先ほどまでうろついていた「1003」が描かれている。
なんと、赤松かおりさんご本人による、神戸古書店ツアーの個展の設営中。
この「1003」のイラストは、「1003」アカウントのリツイートで、
先日見たばかり。これが本物か!壁にかけている最中なのに、
見させてもらう。すいません。書肆スウィートヒアアフター
おひさまゆうびん舎、エメラルドブックス、最後、もう一枚、
かかっていないのは後で見ようと、本も見る。
短歌の本がいっぱいあって、ちばさとの本も。


そうして最後の一枚の絵は、
ワールドエンズガーデン!


しまった!もう時間があまりない。
「また来ます」という怪しい一言を残して、
再び雨の路上へと飛び出す。そうして、
うみねこ堂書林に飛び込み、飛び出る。


JRの電車に揺られながら、
さっきの5枚の絵を思い出す。
行ってきたばかりの1003、今いるスウィートさん、
これから行くワールドエンズさんのイラスト。
なにか、奇妙な物語の中にいるような、
居心地の悪さを感じる。


灘。
初めての灘。


改札を出て、駅に設置されている近隣の地図を探す。
なんと、自動改札機のすぐそばにあって、地図を見ようとすると、
改札機の通路をふさぐように立たざるを得ない。
いったいどうしてこんなとこに設置したんだ。


やはり1003でいただいた「神戸・書店マップ」を見ながら、
ワールドエンズさんを探す。ちょっと迷ったが、
開かれたドアの前に立つことができた。
小沢さんに挨拶して、さっそく。


以前に、カレーと本についてツイートしたときに、
小沢さんから「これですか?」と送られてきた写真の通り、
食卓に陳列されたおすすめの新刊書があった。


広い。そこかしこにマンガが仕掛けられている。
噂のベッドだ。おそれおおくて、さわれない。
おう!猫ちゃん!でもさわらない。猫より本。


イベントのために18時にいったん閉める、
ということだったので、ゆっくりと棚を眺めた。
途中、とうとう誘惑に負けてぶんちゃんに手を出したら、
威嚇されたりしました。自分のずうずうしさにしょんぼり。


購入。古本屋ワールドエンズガーデン。
カズオ・イシグロ土屋政雄わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)』(早川書房


小沢さんに「カレーがめちゃめちゃうまいから楽しみにしていてください」
と言われたが、腹が減って我慢できずにスーパーで菓子パンを買ってしまう。
30分ほどぶらぶらして戻ってくると、店内は人であふれていた。


イベント:『海の本屋のはなし』大読書感想会


『海の本屋のはなし』*3の著者、平野義昌さんを囲んで、
喜久屋書店阿倍野店の市岡陽子さん、垂水の文進堂書店の逢坂肇さん、
本は人生のおやつです!!の坂上友紀さん、元リブロ池袋の 辻山良雄さん、
スリランカカレー店カラピンチャさんでお話。苦楽堂の石井伸介さんが、
スリリングに話をさばいて、いろいろと刺激をいただきました。


トークのあと、カレーを堪能していると、
遠くで終電の気配。そうそうに家路へ。
市岡さんと、お話してみたかったな、と思いつつ、
自分は未熟過ぎて、ちょっとおそれおおいな、とも思う。


石井さんが「この本を読んで変わったことはなんですか」
と訊ねていた。僕は、この本を読んで、何か変わったろうか。
このイベントに参加して、何か変わっただろうか。


いい仕事を、しなければね。